娘が生まれた日のことは今でも鮮明に覚えている。
出産当日、私は立ち会うつもりで病院へ向かった。
ところが直前で断られた笑
後から聞くと、やっぱり見られたくなかったらしい。妻のお母さんもいたので、そちらが優先されたのだろう。当然だと思う。
私は病室の外で待っていた。
前日の夕方から病院にいて、当時はまだタバコを吸っていたので喫煙室を行ったり来たりしていた。
そして朝方。
薄いカーテン越しに聞こえてきた娘の産声。
あの瞬間の鳥肌は今でも忘れない。
感動した。
そして心の中で決めた。
この子を大切にしよう、と。
そういえば、娘が生まれたことをきっかけにタバコもやめた。
当時はかなり吸っていたが、不思議とやめようと思えた。
父親になった実感が少しずつ湧いてきたのも、その頃だった気がする。
娘との関わり方は人それぞれだと思う。
ただ、娘が幼稚園に入った頃、私は一つのことに気づいた。
もし一人娘なら、私にとっても全てが一度きりの経験になる。
運動会も。
参観日も。
卒業式も。
受験も。
人生で一度しかない。
娘のためでもあったが、自分のためでもあった。
娘に関わることを避けることは、自分自身の人生経験を減らすことでもあると思った。
だから私は決めた。
全部参加しようと。
それからは本当に全部参加した。
幼稚園の送り迎え。
運動会。
参観日。
個人懇談。
塾選び。
学校選び。
オープンスクール。
文化祭。
会社も休んだ。
営業職だったので、陰で何か言われていたかもしれない。
でも気にしなかった。
私には私の信念があった。
家族を大切にすること。
娘を大切にすること。
それだけだった。
そして、娘との約束もあった。
受験の日は必ず私が送って行くこと。
そして受験会場に入る前に二人で写真を撮ること。
いつから始まったのかは覚えていない。
でも気づけば我が家の恒例行事になっていた。
中学受験もそうだった。
高校受験もそうだった。
大学受験もそうだった。
受験会場の前で写真を撮る。
周りから見れば何気ないことかもしれない。
でも私たちにとっては大切な儀式だった。
「頑張ってこい」
そんな言葉よりも、その一枚の写真の方が安心できた気がする。
今でもその写真は残っている。
私にとっては娘との大切な思い出の一つだ。
娘が通っていた私立中学校の懇談会も印象に残っている。
保護者が集まり自己紹介をする時間があった。
ほとんどがお母さんだった。
父親は私を含めて二人だけ。
私は皆の前でこう言った。
「娘はいい子なので、仲良くしてやってください」
今思うと少し恥ずかしい笑
でも本心だった。
ガールスカウトにも積極的に参加した。
キャンプにも参加した。
そこで親同士の友人もできた。
気づけば家族ぐるみでキャンプに行く仲間までできていた。
幸せな時間だった。
振り返ると、娘の行事や人生に関わることは私の生きがいだったのかもしれない。
就職のこと。
進学のこと。
将来やりたいこと。
娘が悩んだ時は一緒に考えた。
娘に子どもができたら全力で可愛がろう。
そんな未来まで勝手に想像していた。
人生は思い通りにはならない。
今、家族の形は変わった。
娘も大学生になった。
以前のように毎日話すこともない。
先日も久しぶりにLINEを送った。
「何かあったらいつでも相談しなよ」
最後に「じゃあね」と手を振るスタンプを付けた。
多分、既読スルーだと思う笑
でも、それでいいと思った。
親として言いたいことは十分伝えてきた。
あとは娘の人生だ。
それでも後悔はない。
娘が生まれた日の鳥肌を今でも覚えている。
幼稚園の送り迎えも。
運動会も。
文化祭も。
受験も。
全部覚えている。
私は自分なりに全力で父親をやった。
これ以上はできないと思うくらい関わった。
東京にまでついて来たくらいだから笑
親バカと言われればその通りだと思う。
でも、それでいい。
うまくいくこともある。
うまくいかないこともある。
人生は思い通りにならない。
それでも、娘と過ごした時間だけは私の宝物だ。
そして、そのことに後悔は一つもない。

