娘の運動会だけは絶対に休んだ

娘が私立の中学校へ入ってからは女子中高だったこともあり、運動会へ行くことはなくなった。

だから私が参加した運動会は、幼稚園から小学校までだったと思う。

でも、その間は一度も休まなかった。

仕事は休んだ。

何の後ろめたさもなかった。


当時、年配の先輩に言われたことがある。

「俺たちの頃は、子供の運動会くらいで仕事なんて休めなかったよ」

そうなんだと思った。

でも、私は気にならなかった。

私には私の考えがあった。

娘に関することは、全部参加しよう。

そう決めていた。


子供が好きだった。

一人娘だった。

私の人生で家族を持つことができたなら、全力で大切にしたいと思っていた。

綺麗事じゃない。

本気だった。

そしてもう一つ。

自分自身が後悔したくなかった。

人生は一度しかない。

娘の運動会も、一年に一回しかない。

その日を仕事で終わらせることは、私にはできなかった。


運動会の朝。

妻がお弁当を作り、家族で食卓を囲む。

娘は少し緊張している。

私はカメラを準備する。

場所取りをして、必死に娘を追いかける。

でも途中で思う。

ファインダー越しじゃなく、自分の目で見たい。

そんなことを何度も思った。

それくらい、一つひとつが大切だった。


妻や義父母も来ていた。

娘は楽しそうだった。

その笑顔を見ているだけで十分だった。

あの頃の私は、仕事よりも家族を優先した。

それでよかったと思っている。


今、娘は大学生になった。

家族の形も変わった。

簡単には会えなくなった。

話す機会も少なくなった。

だからこそ思う。

あの時、全部参加しておいて本当によかった。

子育てに関して、私は一つも後悔がない。

できることは全部やった。

それ以上は、きっとできなかった。


その一方で、参加できなかったこともある。

成人式の前撮り。

二十歳のお祝い。

この先も、卒業式や就職祝い、お正月やお盆。

一緒に過ごせない時間は増えていくのかもしれない。

それは少し寂しい。


だから今、小さな子供がいる人には伝えたい。

近くにいる時間は永遠じゃない。

仕事も大切。

でも、子供と過ごせる時間も、同じくらい大切だ。

私は娘の運動会には必ず行った。

それは運動会が大切だったからではない。

娘との時間を後悔したくなかったからだ。

もしもう一度同じ人生を歩むとしても、私はきっと同じ選択をする。

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