家族の約束。
暗黙のルール。
どこの家庭にもそういうものがあると思う。
我が家にもあった。
それは、受験の日に娘と一緒に写真を撮ることだった。
私は娘の学校のこと、塾のこと、習い事のこと。
かなり深く関わってきたと思う。
娘ともよく話した。
年頃の娘にしては珍しいくらい、私の話にきちんと耳を傾けてくれた。
今でも思う。
それは彼女の力だった。
聞く力。
そして、自分で判断する力。
そんな娘だった。
私立中学の受験が始まった頃から、学校選びも一緒にした。
オープンスクールも何校も回った。
毎日のように進路について話し合った。
面白いもので、案外こういうものは直感が当たる。
学校の雰囲気。
空気感。
先生の立ち居振る舞い。
環境。
そういうものが全部重なって直感になるのだと思う。
ある学校のオープンスクールを見学した帰り道。
校門を出て歩きながら、二人で顔を見合わせた。
「ここだね」
迷いはなかった。
何かから解放されたような不思議な感覚だった。
そして受験当日。
いつもの送り迎えとは車の中の空気が違った。
娘も緊張していたのか、言葉数が少ない。
集中していたのかもしれない。
少し早く着きそうだったので、コンビニの駐車場で時間を調整した。
その時だった。
深い意味はなかった。
ただ、
「記念に写真撮ろうか」
そう言った。
それが始まりだったと思う。
高校受験の時には、それは完全に恒例行事になっていた。
いわゆるジンクスというやつだ。
受験の日の送迎は妻ではなく、娘は私を指名した。
そして、当たり前のように写真を撮った。
高校受験も。
大学受験も。
大学受験は東京だった。
学校の近くまで歩き、何も言わなくても自然とカメラを構えた。
自撮りで一枚。
もはや暗黙の了解だった。
結果は全部合格笑
面白いものだと思う。
運命なのか。
ジンクスなのか。
本当に写真に力があったのか。
後から写真を見返して気づいた。
中学受験。
高校受験。
大学受験。
全部笑顔だった。
笑顔には力があるのだろうか。
結果的に娘は、中学、高校、大学と第一志望に合格した。
そして、もう一つ。
二人の中で決まっていたことがあった。
いや、私の中の決まりだったのかもしれない。
私は娘に、
「頑張れ」
とは言わなかった。
受験だけではない。
何か大切な時。
必ず、
「楽しんでおいで」
と言っていた。
気負うな。
自分を追い込みすぎるな。
少し俯瞰して見てほしい。
そんな気持ちだったのだと思う。
ある時、娘に言われたことがある。
「パパって、いつも頑張れじゃなくて、楽しんでねって言うよね」
ちゃんと伝わっていたんだと思った。
嬉しかった。
もしかしたら、娘の結果は最後まで楽しんだ結果だったのかもしれない。
それもまた、娘の力なのだと思う。
またいつか。
娘と大事な節目で写真を撮れたらいいなと思う。
その時はきっと、
昔みたいに何も言わなくても、
自然とカメラを構えて、
笑いながら一枚撮るのだと思う。
そして私は、きっとまた同じことを言う。
「楽しんでおいで」
って笑

