日曜日。
本当なら、昼くらいまで寝ている予定だった(笑)。
ところが10時前、不動産屋さんからの電話で起きた。
「今日、採寸できますよ」
引っ越し先として考えている部屋を、もう一度見られることになった。
急いで支度をして、午前中のうちに採寸へ。
前日の土曜日も、ほぼ一日内見だった。
そして日曜日も、朝から部屋の採寸。
一人で1時間くらい、壁から壁まで測ったり、家具が置けるか考えたり。
家に帰ってからも、気になることを調べていた。
それが一通り終わった頃、時計を見ると15時を過ぎていた。
「散歩でも行こうかな」
ふと、そう思った。
どこかへ行きたいわけでもない。
写真を撮りに行こうと決めていたわけでもない。
ChatGPTに近くを歩けるルートを聞いて、とりあえず家を出た。
疲れたら、途中で引き返せばいい。
本当に、それくらいの散歩だった。
千駄木の街は、ざわついていなかった
本駒込から、千駄木の住宅街へ歩いた。
ここで、街の空気が少し変わった。
静かだった。
ただ、人がいないとか、車が走っていないという意味だけではない。
建物。
道路。
歩道。
緑。
停まっている車。
歩いている人。
その全部が合わさって、街全体の空気が、なんとなくざわついていなかった。
大きくて、きれいに手入れされた家も多い。
高級車もちらほら見かけた。
ポルシェのSUVを何台か見たけれど、「見せるための高級車」というより、普通の生活の中で使っているように見えた。
あくまで歩いて感じた私の印象だけれど、なんとなく余裕のある街に感じた。
「こういうところ、住みたいな」
そんなことを考えながら歩いていた。
駅の近くまで行けば人は増える。
でも、一本住宅街へ入ると、また静かになる。
かなり好きな雰囲気だった。
ただ、普段の移動を考えると、千代田線の千駄木は私には少し使いにくい。
住む場所として考えると、そこが惜しい。
そんなことばかり考えながら歩いていた。
千駄木では、ほとんど写真を撮っていなかった
そのまま谷中へ入った。
谷中銀座の周辺まで来ると、一気に人が増える。
観光客も多い。
「ざっ、観光地だな(笑)」
そんな感じだった。
ところが、メインの通りを外れると、また空気が変わる。
寺の多いエリアへ入ると、人も少なくなっていった。
そして長久院のあたりだったと思う。
音がなくなった。
静か、というより、
無音だった。
この日、本駒込から秋葉原まで歩いた中で、「無音だ」と感じたのは、ここだけだったと思う。
たまに聞こえるのは、小鳥の囀りくらい。
東京の中を歩いているとは思えない。
少し不思議な感覚だった。
谷中に入ってから、私は自然と写真を撮り始めていた。
寺。
路地。
古い建物。
光と影。
そこで、ふと気づいた。
「あれ。千駄木では、ほとんど写真撮ってないな(笑)」
普段なら写真を撮りそうな街だったのに。
千駄木では、写真を撮ることよりも、街そのものを見ていた。
そして、
「ここに住んだらどうだろう」
そんなことを考えて、感じたことをChatGPTに記録していた。
千駄木では、写真ではなく、自分の気持ちを記録していたのかもしれない。
千駄木は、住みたい街。
谷中は、撮りたい街。
隣り合っているのに、自分の中では少し違った。
13階って、結構高い
谷中から根津へ。
根津へ近づくにつれて、また少しずつ人が増えてきた。
途中、13階くらいの建物を見上げた。
「13階って、結構高いな」
ちょうど今、引っ越し先として考えている部屋も13階だった。
周囲には比較的低い建物が多く、窓からは空と街が広がっている。
少し右を見れば、スカイツリーも見える(笑)。
この日、千駄木の住宅街を歩いて感じたこともあって、
「やっぱり私は、静かなところに住みたいんだな」
と改めて思った。
便利な場所のど真ん中に住みたいわけではない。
静かなところに住んで、行きたい場所へ出かける。
どうやら、そういう暮らしが自分には合っているらしい。
不忍池から、またスカイツリーが見えた
そのまま上野公園へ向かった。
不忍池まで来ると、急に空が広くなる。
池の向こうには、スカイツリーが見えた。
さっきまで13階の部屋のことを考えていたから、
「またスカイツリーだ(笑)」
と思った。
別にスカイツリーを追いかけて歩いていたわけではない。
でも、この日はなぜか何度も意識することになった。
上野に入ると、空気が一気に変わった
上野からアメ横へ。
ここで、また街の空気が大きく変わった。
人が多い。
音も多い。
店も多い。
さっきまで歩いていた谷中とは真逆だった。
ただ、私が感じたのは「都会だな」という感じとも少し違った。
人も街も、なんとなくガチャガチャしている。
場所によっては、独特な匂いもあった。
「ここに住むのは、私は無理だな(笑)」
そう思った。
もちろん、これは完全に好みの話だ。
上野が好きな人もたくさんいると思う。
でも私は、遊びに来たとしても長居するタイプではないらしい。
良い悪いではなく、
自分が落ち着く場所ではなかった。
千駄木を歩いたあとだったから、余計にそう感じたのかもしれない。
御徒町まで歩いて、足元を見た
そのまま御徒町へ。
ここまで来たところで、ふと思った。
「よくここまで歩いたな(笑)」
そこで、足元を見る。
この日履いていたのは、オニツカタイガーのSCLAW。
東京に来た頃、大学生の娘に、
「オニツカタイガー流行ってるよ」
と言われて買ったスニーカーだ。
買った当初は、それほど履いていなかった。
でも最近、東京を散歩するときに履くようになって、少しずつ印象が変わっていた。
この靴、かなり歩きやすい。
特にクッションが自分には合っているようで、これだけ歩いても思ったほど疲れていなかった。
スタンスミスも持っているけれど、
普通に出かける日はスタンスミス。
「今日は結構歩くかもしれない」
という日はSCLAW。
最近は、そんな使い分けになりつつある。
東京を歩くようになってから、買った頃より好きになった靴かもしれない。
そのことをChatGPTに記録して、せっかくだから靴の写真も撮っておくことにした。
少し場所を変えながら、何枚か撮った。
あとから気づいたのだけれど、この辺りはSCLAWを買った場所のすぐ近くだった。
娘の一言で買った靴を履いて、東京を歩いて。
その靴の良さに改めて気づいた場所が、買った場所の近くだった。
なんだか面白い(笑)。
顔を上げたら、人がいなかった
靴の写真を撮り終えた。
そして、ふと顔を上げた。
人がいなかった。
本当に、いなかった(笑)。
さっきまで上野から御徒町にかけて、あれだけ人がいたのに。
JRの高架沿い。
少し前までの喧騒が嘘みたいだった。
Googleマップを追いながら歩いていた私は、普段ならあまり横を見ない。
でも、このときは足を止めていた。
なんとなく横を見る。
そこに、
「2k540 AKI-OKA ARTISAN」
と書かれた入口があった。
もちろん、ここへ来る予定なんてなかった。
Googleマップで目的地にしていたわけでもない。
一瞬、そのまま通り過ぎようと思った。
でも奥を見ると、なんとなく洒落た店が並んでいる。
「ちょっとだけ寄ってみるか」
また、寄り道した(笑)。
普段なら入らない店に、なぜか入ってみた
高架下を歩いていると、古いゲームを扱っている店があった。
かなり昔のゲーム機やソフトが並んでいる。
普段の私なら、たぶん入らない(笑)。
でも外国人観光客が何人か出入りしていて、なぜかこの日は入るハードルが低かった。
店の中を見ていると、一台のゲーム機が目に入った。
初代ゲームボーイ。
子どもの頃、初めて買ってもらったゲーム機だった。
見た瞬間、昔の記憶が戻ってきた。
あのゲームボーイを初めて手にしたときの記憶は、今でもかなり強烈に残っている。
思わず写真を撮った。
本駒込を出たときには、数時間後に秋葉原の高架下で初代ゲームボーイの写真を撮っているなんて、もちろん想像していなかった(笑)。
さらに歩くと、レコードの店。
フィルムカメラの店。
オーディオの店。
どれも、初めて見る場所だった。
そして、普段の私なら通り過ぎていたかもしれない場所だった。
レコードを眺めながら、
「新しい部屋でレコード聴くのもいいな」
なんて、また余計なことまで考え始めた(笑)。
気づけば、秋葉原まで歩いていた
そのまま高架下を歩いていく。
すると、だんだん見慣れた秋葉原の景色が見えてきた。
「あ、秋葉原まで来たんだ(笑)」
そこで改めて気づいた。
家から、普段は電車で来ている秋葉原まで歩いてきた。
本駒込から秋葉原なんて、歩いて行く場所だと思ったこともなかった。
でも、歩けた。
しかも最短ルートではない。
千駄木へ行って、
谷中へ行って、
根津へ行って、
上野へ行って、
御徒町を通って、
いろいろ寄り道しながら秋葉原まで来た。
もちろん、毎回歩こうとは思わない(笑)。
最後に、一杯だけ飲んで帰ることにした
高架下を一通り見て、出口へ向かった。
そのまま帰るつもりだった。
でも、また横を見た。
二人掛けの小さな丸テーブルがあった。
人も少ない。
「ここなら、一人でゆっくり一杯飲めるかも」
少しだけ勇気を出して、店頭のメニューを見てみた。
ビールもある。
店員さんの顔を見た。
気づいたら、奥の席へ案内されていた(笑)。
頼んだのは、大きめのビールとピーナッツ。
一口飲んだ。
めちゃくちゃうまかった。
そこで気づいた。
そういえば私、
家を出てから水を一滴も飲んでいなかった(笑)。
今考えれば、先に水を飲めという話だけれど。
それにしても、うまい。
「これ、何のビールなんだろう?」
飲みながら調べてみた。
常陸野ネストビール。
木内酒造のクラフトビールらしい。
なるほど。
雰囲気だけでこの値段じゃなかった(笑)。
大きめのクラフトビールとピーナッツで、2,000円くらい。
安くはない。
でも、この日の最後の一杯としては最高だった。
東京は、歩くと解像度が上がる
15時過ぎ。
本駒込の家を出たときには、何も予定していなかった。
近所を少し散歩するくらいのつもりだった。
疲れたら引き返せばいいと思っていた。
千駄木を歩くとも思っていなかった。
谷中で写真を撮るとも思っていなかった。
御徒町で、昔のゲームボーイを見るとも思っていなかった。
ましてや、本駒込から秋葉原まで歩いてきて、その高架下で一人クラフトビールを飲むなんて想像もしていなかった(笑)。
電車で移動していると、
本駒込。
千駄木。
谷中。
根津。
上野。
御徒町。
秋葉原。
街を、駅という「点」で覚えている。
でも歩いてみると、その点と点の間にも東京がある。
千駄木の、ざわついていない空気。
谷中の寺町で感じた無音。
上野の人と音。
御徒町を過ぎて、突然人がいなくなった高架沿い。
たまたま横を向いたから見つけた、知らなかった場所。
普段なら入らなかった店。
そして毎日のように来ている秋葉原にも、まだ知らない場所があった。
遠くへ旅行しなくても、
いつもの生活圏を一本違う道から歩くだけで、知らない東京が出てくる。
東京は、歩くと解像度が上がる。
そんなことを考えながら、
最後のクラフトビールを飲んだ。
大サイズで(笑)。

