家族と暮らしていた頃、お金を使えなかったわけじゃない。
ただ、優先順位が違った。
家計は私が管理していた。
余裕がある時も、余裕がない時もあった。
そのたびに最初に考えるのは、妻と娘のことだった。
欲しいものがあると言われれば悩む。
最終的には、自分の分を削る。
そんな生活をずっと続けてきた。
結婚した当初は小遣い制だった。
当時は不満もあった。
もっと自由に使いたいと思っていた。
でも、家計を管理するようになって気づいたことがある。
管理する人は、実は一番自由じゃない。
カフェへ行く。
服を買う。
ちょっとした買い物でも、頭のどこかで家計のことを考える。
我が家は娘が中学から大学まで私立だった。
その現実を一番近くで見ていたのも私だった。
そして家族の形が変わった。
今は、自分のお金を自分で決めて使える。
服が欲しければ買える。
香水が欲しければ買える。
誰かの優先順位を考えなくていい。
だから、お金のストレスは減った。
でも、不思議だった。
ずっと欲しいと思っていたPS5。
新しいカメラ。
一人になれば買うと思っていた。
でも買わなかった。
買えるようになったのに、欲しくなくなっていた。
改めて考えてみた。
私は本当にゲームが欲しかったんだろうか。
カメラが欲しかったんだろうか。
違ったのかもしれない。
家族旅行へ行くからカメラが必要だった。
家族との時間があるからゲームをしたかった。
物が欲しかったわけじゃない。
その先にある時間が欲しかった。
最近、本屋へ行くと旅行の本を手に取る。
一人で旅行へ行こうとは思わない。
それでもページをめくる。
いつかまた、大切な人と旅行へ行きたい。
そんな未来を、どこかで想像している。
半年経って、少しずつ分かってきた。
私が欲しかったのは、物じゃなかった。
安心できる暮らし。
誰かと過ごす時間。
思い出を作ること。
そこにお金を使いたかったんだ。
今は、誰の許可もいらない。
自分で決められる。
自由になった。
でも、その自由の中で気づいた。
本当に欲しいものは、お金で買えるものばかりじゃなかった。

