久しぶりに、自分一人で服を選んだ。
たぶん20年ぶりくらいだと思う。
正確にはもっと前かもしれない。
結婚してからは、服を買わなかったわけじゃない。
でも選ぶのは妻や娘だった。
二人ともセンスが良かった。
私は素直に任せていた。
それで十分だった。
むしろ、自分の服より家族にお金を使う方が嬉しかった。
娘の学費。
家族旅行。
誕生日。
結婚記念日。
特別な日は特別なことをしたかった。
結婚10周年にはハワイへ行った。
もう一度結婚式もした。
家族が喜んでくれるなら、それで良かった。
だから自然と、自分のことは後回しになった。
ユニクロで2,000円の服を買って満足していた。
それも本心だった。
でも先日、久しぶりに服を買いに行った。
夏服が本当に無かったからだ。
有楽町を歩き、
丸の内まで歩き、
結局また有楽町へ戻った。
服を買うだけなのに、なかなか決まらない。
それもそのはずだ。
長い間、自分で選んでいなかった。
何が似合うのか分からない。
何を選べば良いのか分からない。
少し戸惑った。
でもその日は違った。
自分で決めようと思った。
店員さんと話しながら、
良いなと思った服を手に取る。
そして気づいたことがあった。
私は昔から色に弱い。
近い色や淡い色の違いが分かりにくい。
店員さんに、
「紺色のあのシャツ」
と言ったら、
少し悩んだ後に、
「このグリーンのシャツですか?」
と聞かれた。
その時、ハッとした。
そうだった。
私は昔からそうだった。
だから妻や娘が自然に補ってくれていた。
そのことに初めて気づいた。
結局、その日は店員さんに素直に頼った。
「これとこれは合いますか?」
「この色は大丈夫ですか?」
営業職の私からすると少し悔しい気もしたけれど、プロに頼るのも悪くなかった。
結果として、とても満足できる買い物になった。
4着買った。
安くはなかった。
でも満足度は高かった。
家に帰ってからは、服を洗濯ネットに入れるようになった。
今までなら絶対にしなかったのに笑
それくらい大切にしたいと思った。
帰り際、店長さんが名刺を渡してくれた。
その接客も嬉しかった。
また来たいと思った。
私は今でも、新緑の本当の色を知らないのかもしれないと思うことがある。
周りの人が見ている鮮やかな緑と、私が見ている緑は違うのかもしれない。
でも、それを不幸だとは思わない。
親がくれた体だし、この色の世界で生きてきた。
これからも生きていく。
いつか技術が進歩して、本当の新緑が見える日が来るかもしれない。
その時はその時だ。
20年ぶりの本気の服選びは、思った以上にたくさんのことを気づかせてくれた。
そして何より、
久しぶりに自分のために時間とお金を使った日だった。
家族最優先で生きてきた。
それは後悔していない。
でも、その日は少しだけ違った。
紙袋を持って歩きながら、少し得意げな自分がいた。
久しぶりに、自分を見つけた気がした。

